果実のシンデレラストーリー。

桜が散りはじめると、
今度はくだものの花盛り。
農作業は一気に慌ただしくなる。

田植えの準備とちょうど時期が重なるからね。
米づくりといくつかのくだもの栽培を兼ねる
丹野さんも大忙し。

収穫のときの理想の姿を思い描きながら、
枝の剪定、花の選別をおこなう。
実のなる数、場所、そして
陽の当たり具合をイメージするんだ。

ラ・フランスはそれでも手間がかからない方だね。
ただ、軸が固くて風に弱く折れやすいから、
収穫前の台風がいちばんコワイ。

見た目の悪さから、以前は
「みだぐなし」と呼ばれてね。
もぎたてはジャガイモみたいな味だから。
丹野さんが言う。

ところが、収穫後に追熟することで、
香り高く、上品でなめらかな舌触りとなる。
それがわかってからの名は「くだものの女王」。
まるでシンデレラの物語。

食べごろサインは、軸の根元周辺が
ほどよい柔らかさになったら。

きっちり追熟したラ・フランスは、
食べた人を幸福にする。
これ、おおげさでなし。

>> お宝読本「タカラの山ガタ」ホーム

ツイート