牛飼いは愛情で育てる。
よく乾燥させた稲わらのにおいが、
冬の朝の張りつめた空気を満たして、心地いい。
畜産家の朝は早い。
なにより先に牛の顔色を見る。
健康状態に気を配りながらのエサやリ。
それから、休むヒマなく、
堆肥出しなどの世話が続く。
四季の、そして朝晩の寒暖の差が、
いい牛を育むのだという。
けれど、その寒さ、暑さが、逆に人の労を増やす。
肉質に厳格な格付けがされる山形牛。
平尾さんはここ数年、
連続して最上級のA5ランクを得ている。
牛飼いがツラくて、やめようと思ったことはない。
いい牛を育てる充実感があるからね。
平尾さんからにじみ出る自信と誇り。
山形牛のうまさは、同じ思いの、
多くの畜産農家たちに、支えられている。